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三内丸山遺跡とさんまるミュージアムに行ってきました

時間を超えて

憧れの三内丸山遺跡さんまるミュージアムに行ってきました。三内丸山遺跡は、縄文時代前期~中期の大規模な集落跡。一時は野球場建設のため取り壊されそうになりましたが、発掘調査でその重要性が判明し、保存されることになったそうです。現在は、世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一角を担っています。

最初の展示室「縄文のこころ」のコーナーには、出土した石器や装身具、土偶や岩偶、縄文土器などがシンボリックに展示されています。ここに展示されている品は、どれも見ごたえがありました。丁寧に加工された石器、装飾のあるヘアピン、水晶製の石鏃、印象的な表情の土偶など。何千年も昔の手仕事に、思わず惹きつけられます。

下の写真は、大型板状土偶。この遺跡では十字型の板状土偶がよく見つかっているそうです。

縄文人の暮らしをひもとく」のコーナーでは、当時のゴミ捨て場(水分が多く遺物の保存状態が良い)などで見つかった数多くの出土品をもとに、縄文時代の生活の様子が紹介されています。

当時は現在よりも気温が2~3度高く、食べ物を手に入れやすかったとのこと。魚の中ではブリの骨がよく見つかるそうです。動物では、他地域で多いシカやイノシシの割合は低く、ウサギやムササビが多いとか。どんな理由でその違いが生まれたのか気になります。また、ニワトコという植物の種子からお酒が造られていたのではないかという説も紹介されていました。

それにしても、おびただしい遺物や土や石の中から、小さな動物の骨、植物の種子などを選り分け、同定し、記録する労力もすごいなと思います。そういう地道な作業のおかげで、私たちは時間を超えて、何千年も昔の人々の暮らしを垣間見ることができるのです。

上の写真は土器ステージ。バケツを縦に引き伸ばしたような円筒式土器がこの地域の特徴です。時代が下るにつれ、他の地域の様式が混ざり、独自性が失われていくそうです。

また、三内丸山遺跡では、他の遺跡に比べて、土偶が圧倒的に多く出土しているとのこと。土偶は、祭祀に使われていたと考えられています。祭祀に関する特別な存在がいたのかもしれませんね。

奥行きのある風景

展示を一通り見学した後、ボランティアさんの案内で屋外の遺跡を歩きました。雨が降っていましたが、長靴無料貸し出しサービスのおかげで、足元を気にせずに済みました。東京ドーム9個分という広い敷地の中に、いくつかの建物やお墓などが復元されています。

上の写真は、環状配石墓(復元)。その他多くの簡易なお墓と異なり、有力者のお墓と考えられています。

上の写真は、復元された長さ30メートル以上の大型竪穴建物(右)と、大型掘立柱建物(左奥)。

大型掘立柱建物跡は、覆いの中に保存されています。柱の穴は、直径も深さも約2メートル。かなり大きいです。

埋設土器なども見ることができます。

上の写真は、ごみ捨て場として使われていた谷。

遺跡を歩くと、住居跡や盛り土、道路、道路の両側に並ぶお墓など、村内の施設の配置も体感でき、面白いです。

最後に、少し小高い場所から遺跡全体を見下ろしました。植生もできるだけ当時の状況に近くなるよう配慮されているとのこと。遠くに山が見え、縄文時代もこんな眺めだったのかなと思わせてくれます。印象深い風景でした。

ところで。

先日、ザ・ビートルズの新曲が発売されましたね。ビートルズの「聖地」として有名な場所の一つに、アビー・ロードがあります。ただの横断歩道も、ファンにとっては特別な場所。

今とは異なる時間や、かつてそこにいた人たちに思いを馳せることで、目の前の風景に豊かな奥行きを感じられることがあります。三内丸山遺跡も、そんな場所の一つです。