博物館ランド

ミュージアムの面白かったところをレポートするブログです。

兵庫県立美術館「プラド美術館展」

ベラスケスがやってきた!

兵庫県立美術館に行ってきました。

建物は安藤忠雄氏の設計で、港町・神戸の海に面した場所に建てられています。下の写真は、ヤノベケンジ氏の「Sun Sister」と美術館。

f:id:kamesanno:20180703212634j:plain

プラド美術館展―ベラスケスと絵画の栄光―」(会期:2018年6月13日~10月14日)を見てきました。

6月の日曜日に訪れましたが、そこまでの混雑はなく、自分のペースで見ることができました。

プラド美術館のコレクションの核となっているのは、スペインの王侯貴族の収集品。ベラスケスは、特に美術に関して熱心だったフェリペ4世との関係が深かったそうです。ということで(?)、展示会場の設えもそこはかとなく宮殿風。

今回の展覧会では、絵画作品が17世紀の油彩画を中心に約60点、同時代の様子を伝える書籍も9点ほど展示されていました。大型の作品が多く、見ごたえのある展覧会でした。

f:id:kamesanno:20180703212809j:plain

写真は展示室入口。出展されている7点のベラスケス作品をあしらったタペストリーが出迎えてくれます。

ベラスケスの作品は、少し離れたところから見ると写実的に見えますが、近づくと、意外とラフなタッチで描かれていることに気づきます。まず少し離れたところから全体の印象を眺めた後、できる限り近づいて細部を観察し、もう一度距離をとって鑑賞し直す・・・そんなふうに、一枚の絵を何通りにも楽しむことができます。

また、ベラスケスの人物画には、不思議な自然さがあって、描かれた人物がどんな人であったかを無言のうちに語っているようでもあり、想像力を刺激されます。

若い頃の作品もあるので、制作時期による作風の変化などをチェックしてみるのも面白いかもしれません。

17世紀スペインの視点

f:id:kamesanno:20180703212553j:plain

会場では、「芸術」「知識」「神話」「宮廷」「風景」「静物」「宗教」の各テーマごとに作品が展示され、当時の社会の様子も解説されていました。

例えば「宮廷」の章では、宮殿の建物や装飾、そこに暮らした人々のことが、「宗教」の章では、当時の宗教界の動きや、カトリック教会と宗教画の関係などが解説されていて、17世紀の人々の目に絵画がどのように映ったかを想像しながら作品を楽しむことができます。

「芸術」の章では、画家たちが、単なる職人ではなく芸術家としての自負を持って作品を「創造」する姿が紹介されていました。17世紀のスペインでは、画家たちの地位向上を目指す運動が高まりを見せていたそうです。美術を単なる職人芸ではなく崇高なものと見る動きは理論面でも表れていたようで、この頃出版され始めた芸術理論書(1600年発行の『諸芸術の評価のための一般的知見』(初版)など)も一緒に展示されていました。

他の技術とは違う、特別なものとしての「芸術」・・・その内容や価値観は時代によって変化しますが、人が美しいものを求め続けているということは変わらないのだろうなと思います。

ところで。

「何かしている姿態は美しいものである。その姿が素朴であればある程美しく絵になると思う。」(『小磯良平画文集 絵になる姿』(求龍堂)より)

これは、20世紀の日本で美を求め続けた一人の画家の視点。

兵庫県立美術館の中に、小磯良平記念室が設けられています。この方の人物画も魅力的です。

色んな視点を楽しめるのも、美術館の素敵なところですね。