博物館ランド

ミュージアムの面白かったところをレポートするブログです。

TeNQ 宇宙ミュージアム

宇宙の「今」から見えるもの

TeNQ宇宙ミュージアムに行ってきました。「宇宙を感動する」をテーマにした、エンタテインメントミュージアムだそうです。

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入場は、15分ごとの時間指定制。時間になると、スタッフの方が案内してくれます。エントランスから続く薄暗い通路が、非日常感を演出します。

このミュージアムでは、まず迫力のある映像を見てから、展示室に入るシステム。通路を抜けてすぐの「はじまりの部屋」では、壁面いっぱいにプロジェクションマッピングが映し出され、続く「シアター宙」では、床面に空いた直径11mの穴の中で映像が展開します。足元を覗き込むように映像を見ていると、浮遊感があり、まるで宇宙船に乗っているような感覚。スタッフの方の語りで映像がスタートする演出ともあいまって、これから物語が始まるような、ワクワク感があります。

映像を見た後は、展示室に移動。最初の展示室「サイエンス」エリアでは、宇宙探査機の調査で判明した、太陽系の天体の姿が紹介されています。

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火星や小惑星イトカワの地表などは、探査機が撮った写真を使用した、実物大のパノラマで紹介されていて、臨場感をもってその姿を捉えることができます。

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また、このミュージアムの目玉の一つが、館内に東京大学総合研究博物館の研究室分室が置かれていること。研究者たちが働いている様子や、研究内容を知ることができるほか、来館者が研究に参加できるコーナーもあり、研究者と来館者の双方向的なやりとりが図られています。探査機から送られてきた、最新の画像も公開されていて、宇宙の「今」に触れられる環境は、刺激的です。

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上の写真は、個人的に好きなコーナー。

天井の丸いスクリーンに流れる映像を、下のソファにゆったりともたれて眺めることができます。映像は、地球観測衛星が撮影したもの。じーっと見ていると、まるで自分が人工衛星の目になって地球を見下ろしているような気分になります。ソファに体を預けたまま日常を離れる感覚に、癒されます。

でもどうして、わざわざ地球を飛び出して、宇宙のことを調べようとするのでしょう? こちらの解説によると、「宇宙さがしは自分さがし」とのこと。生命はどこからやってきたのか、地球はどんな仕組みで成り立っているのか・・・宇宙の様々な天体を調べることで、これらの答えを探そうとしているそうです。

それは、「自分とは何か?」という問いにもつながります。長きにわたって多くの人を惹きつけてきた、魅力的なミステリーです。

宇宙が遊び場

2つ目の展示室は、「イマジネーション」エリア。

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ゲームやアート、星座の形を楽しむオブジェなど、「宇宙から想像をかきたてられて生まれたコンテンツ」を楽しむことができます。こちらのエリアは「がっつり理系」ではなく、分野に囚われない自由さと、遊び心が感じられます。

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上の写真は、「宇宙自分診断」。いくつかの質問に答えると、「あなたに似た人工衛星は?」「あなたはどんな宇宙人タイプ?」などのテーマに沿って、性格診断してくれます。ちなみに、私に似た人工衛星は、「れいめい」でした。似ていると言われると、どんな人工衛星なのか、ちょっと興味がわきますね。

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そして上の写真は、このミュージアムの大きな特徴と言える「ミッションラリー」。展示に関する謎解きゲームが、ガチャガチャに入れられています。有料、大人向け、「難しいです!」という注意事項付き。でも、大勢の人が、これを楽しそうにやっていました。

博物館に行けば解説文を読んで勉強する、というかつてのイメージとは異なり、ここでは、来館者が仲間とわいわい言いながら、楽しく遊べる工夫がなされています。迫力のある映像や、リアルタイムの宇宙を見せる展示手法などと併せて、一つの新しいミュージアムの形を見るように思います。

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こちらの写真は、出口付近にある「コトバリウム」。印象的な言葉たちが、プラネタリウムのように映し出されます。サイエンスエリアが知るためのコーナーだとすれば、こちらは感じるためのコーナーでしょうか。思いがけない言葉に、出会えるかもしれません。

ところで。

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上の写真は、とあるお寺のお庭。砂と石組みで、雄大な自然や仏教の世界観を表現する枯山水は、時に「宇宙を感じさせる」と言われることもあります。シンプルな石組みが形作る世界に、多くの人が引き寄せらせます。

イマジネーションを働かせて(?)、「宇宙」から枯山水を連想してみましたが、そういうお庭を前にしたときの感覚を思い出すと・・・、本当に人の想像力をかきたてて、その心を解き放つのは、目には見えないもの、いまだ闇に閉ざされた部分ではないかなあと思います。まだ見ぬ世界に心を遊ばせ、未知の自分を発見する・・・宇宙ミュージアムの楽しさの一つも、そういうところにある気がします。